「A House Is Not A Home」楽曲解説

この7月にルーサー・ヴァンドロスが亡くなったことは、彼のデビュー曲を事務所名にするほどのファンである私にとって、悲しく、大きな出来事だった。
私のもとには多くの弔辞が届いた。親戚でもない自分からすると妙な気分でもあるのだが、青春の拠りどころを失ったファンはみんな繋がりたかったのだろう。影を慕いたかったのだろう。トリビュート企画の相談もいくつか寄せられた。
ルーサーは結局一度も日本の地を踏むことがなかった。それゆえだろうか、彼の認知度やステイタスは本国アメリカのそれと日本とでは大きな落差があるように思う。しかし、それでも彼と彼の音楽に心惹かれていた日本の音楽人は少なくなかった。そのことを私はこの機会に初めて体感を伴って知ることになった。何とも皮肉な話だが、彼は死ぬことで最も大きなアピールを果たしてしまった。 私はルーサーのライブを何度か観ることができたし、何より幸運なことには、長時間のインタビューの栄に浴したことがある。テディベアのような巨体。力強い握手。とろけるような美声。破顔という表現こそが相応しい、あのまるい笑顔…。そんな彼のカラダがこの世からなくなってしまったことが、まだどこか信じきれずにいる。
しかし、彼のソウルはまだ此処にある。この地球上にある。それを今回のレコーディングで痛感した。いくつかのトリビュート企画のオファーの中から、いろいろ悩んだ挙句に1曲目として引き受けたのが和田さんのこの曲だった。デビュー前からの長いお付き合いの中でも、これほど和田昌哉の歌声に心揺り動かされたことはない。
ありがとう、和田さん。
そして、さよならの代わりにおやすみを、ルーサー。

2005年8月 松尾 潔
NEVER TOO MUCH